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2013年10月 1日
言っておくがこれは、松本功という早生の天才が20年以上前に作ったミノーである。
前回お見せしたcampbell仕様しかり、この世でまだ誰も、20年前の松本さんにさえ追いついていないのが、現在のハンドメイドミノー業界のレベルである。
ハンドメイド製品を商売にするということは、それで飯を食うと言うことであるから、どんなに良いものであったとしても、5個や10個じゃ食ってゆけない。
だからハンドメイドなんか趣味にしておけと、僕は口酸っぱく言うんだな。
数を求める状況になると、クォリティーはある程度犠牲にせざるを得なくなるから...
松本さんは釣具店を営みながら、傍らで制作が出来る境遇にあったのも圧倒的クォリティーに貢献したと思われる。
だとしても、今現在、故人の遺物であるホットショットを超えるものがないのは厳然たる事実で、自分も含めてそのテイタラクぶりに呆れるばかりだ。
カタクチイワシはソルトウォーターのルアーフィッシングに於いては重要なベイトフィッシュではあるが、通常はこんな小さなルアーは作らない。
大抵は、シーバスや青物を狙うためのルアーである場合が多いから、必然的に大きく重いミノーが求められるからだ。
では何の為に?と思うだろうが、僕に大好きなメッキアジ釣りを教えたのは松本さんだ。
何度か一緒に釣りに行ったが、僕が50mm前後のミノーでやっている側で松本さんは、細くて少し長いミノーで遠くまで飛ばしてバンバン釣っていた。
それがこいつだ。
その後、自分も細長いミノーをこしらえたのは言うまでもない。
シルエットや顔周りの造形は、マイワシでもワカサギでもなく、まさしくカタクチイワシ以外の何ものでもない。
ここでも得意のオリジナルスケールを制作して、側線から下は単目、側線より上はクロス目の鱗模様を表現している。
背中はトーンを抑えながら(あえて目立たぬように)ソフトチュールのマスキングが施されている。
実際のカタクチイワシは青黒い背中だが、何もマスキングしないのは手抜きをしているように思えるものだ。
だからあえて目立たぬように塗装したのだろう、というのが僕の想像だ。
目立たぬようにと簡単に言うが、それをコントロールできるビルダーを僕は他に見たことがない。
ポリカのリップがシェイピングされているのは、おそらくそのままでは狙った動きが出なかったからだと思う。
僕が見ても、あと0.5mmほどラインアイが低い方が泳ぎは出ると思われるからだ。
しかし同時にそれは、カタクチイワシ特有の受け口のシルエットを表現することとはバーターになってしまう。
そのコンマ5ミリに中に、僕は松本さんのチャレンジと葛藤を見る想いがするのだ。
日和佐の赤灯台に夕方4時頃着いて、それから日暮れまでの1時間ちょっとで二人で50匹以上釣ったのがとても懐かしく思い出される。
だから僕は今でもあの赤灯台で釣りをするのが好きなのだ。
たとえ釣れなくても...