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2015年1月 2日
CONTAX T2 & T3 にヴェルビア100F と E-M1+Carl Zeiss Tessar45mm/2.8
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皆様、今年もよろしくお願いいたします。
冷蔵庫を開けると、卵を入れるポケットの下のトレイに小さな紙袋があって、中を確認すると未使用のフィルムが2本入っていた。
使用期限はとっくに過ぎてしまっているけど捨てるのはもったいなくて、久しぶりに銀塩カメラを防湿庫から取り出してフィルムチャージすることにした。
一眼レフも10台ばかりあるが、近頃は老眼でマニュアルフォーカスに全く自信がないので、大好きだったコンパクトカメラに詰める事にした。
経年変化を起こさないチタン外装の小さなボディーに、一眼レフのレンズをも凌駕する性能の単焦点レンズを配置する。
そして、時間という残酷なフィルターを透しても色あせない完璧なデザイン。
今見ても実に惚れ惚れするプロダクトだ。
そしてその外見やスペック以上に、ユーザーの予想を遥かに超えるアウトプットを叩き出せる事こそが銘機の銘機たる所以であろう。
妥協を排してとてつもない物を作り出そうという人間の意思が機械の中に宿った時、それはもはや道具の域を超えているのではあるまいか。
銘機と呼ばれるには、言葉で言い表せない得体の知れないオーラのようなものが必要なのだと僕は考えている。
去年、デビューした時から好きだったアウディ オールロードクワトロという車を中古で買ったのもそんな気持ちの延長だ。
SUVだクロスオーバーだと巷を賑わせている車達にはなぜだかシンパシーを感じない。
機能性が犠牲になっていたり、ヤワな四駆システムでお茶を濁していたり(中にはFFのモデルさえある)割り切りだといえば通りやすい言い訳に聞こえるが、思慮が足りないというのかとにかく中途半端に映ってしまう。
中型のワゴンボディーに車高調整機能のついたエアサスを搭載し、ツインターボエンジンのハイパワーをクワトロシステムで駆動する。
これほど理路整然としたクロスオーバービークルの最適解が他にあるだろうか?
そしてスムーズなルーフラインと絶妙な角度でカットされたカーゴドアが完璧なバランスを保つ美しいボディー。
この車を企画した人々の理想とセンスの高さに拍手を送りたい。
それが中古で軽自動車の価格で手に入るのだから買わずにはいられない(笑)
燃費がどうだとか、修理代がどうだと言い始めると話がつまんなくなるので、その分は満足感との引き換えだと僕は考えている。
そんな風に、何かのリスクと引き換えにしてでも選びたくなるプロダクツが、どんどん減っているように思う。
それは同時に道具の限界を超えた仕事が出来る「職人」が減っている事とシンクロしているのかも知れない。
昨今、世の中すべてが想像の範囲内なのだ。
スペックの限界を凌駕する領域が存在するという事を、少し前の人々は当たり前に知っていたんだと思う。
簡単な道具を駆使して親方の手から生み出される製品は、機械生産のものより遥かに機能的で美しかったと思う。
そういう世界を信じて物作りをしないと、この先、時代を超えてゆく銘機は生まれなくなるような気がする。
CONTAX T2は優雅でありながら時に撮影者も驚くような画像を映し出す。
オールロードクワトロは恐ろしくタフな上に極上の乗り心地でどんな道も走破し、アウトドアのシーンでとても絵になる。
これらのプロダクツに触れていると、自分が物作りに携わっている事が恥ずかしくなる。
理想とするプロダクツに辿り着く為にはまだまだとんでもなく遠い道のりが残されている事を、1本のフィルムが教えてくれたような元旦でした。